メディア批判

何を読むか(4)

『人生、しょせん運不運』(古山高麗雄) このシリーズの初回で、「私は古山高麗雄の脱力した文章が好きだ」と述べたが、古山はいつもいつも脱力していたわけではない。やはり人間なので、腹の立つこともある。そういうときは、全身に力が入ったようだ。とく…

親殺し・子殺し

以前、精神に障害を抱えた三男の暴力に悩んだあげく、その三男を殺してしまった父親の記事(2014年12月4日付朝日新聞朝刊)を読み、どうして父親はそんな風に思い詰めてしまったのか、と不審に思った。そのあと、朝日新聞(2014年12月30日朝刊)に以下のよう…

利益相反

最近よくマスコミなどで使われるようになった「利益相反」とは、中立の立場を守らなくてはならない者が、その中立性に違反して振る舞うということだ。簡単に言うと、「利益相反行為」とは「えこひいき」するということだ。つまり、中立的にふるまわなくては…

新聞

私が新聞に載ったのは後にも先にも一回きりだ。 それは中学生の頃、たしか当時の郵政省のきもいりで「郵便友の会」というのが出来、なぜか私がその会の会長になったときのことだ。 会長といっても、会員はたしか四人だけだ。いや、もっといたかもしれないが…

NHK大河ドラマ「平清盛」

私はNHKの大河ドラマは長谷川一夫の赤穂浪士以来、家にテレビがあるときは(ないときが30歳過ぎから20年ほどあった)、いつも楽しみにして見てきた。しかし、前回の「江」は何度か見ようとしたが少し見てチャンネルを変えるということが二、三度あり…

野村修也委員に委員の資格はあるのか?

前回述べたように、国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)での質疑応答を聞いてきた私は、その二回目の、論点整理(平成 24年 6月 9日発表)に非常に驚き、同時に、怒りを覚えさえした。その怒りの理由について前回は詳しく書けなかったので…

誰が菅総理の声を消したのか

私が怪我をし手術を受け入院しているあいだに、「国会事故調」(「国会東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」)の二回目の聞き取り調査も一巡し、委員会の委員によって第二回目の論点整理が行われた。しかし、それは論点整理とも言えない杜撰なものにな…

光市母子殺人事件

先日、光市母子殺人事件の被告人、大月(旧姓・福田)孝行に死刑が言い渡された。裁判官たちは正気なのだろうか。無責任な世論に迎合しただけではないのか。軽率な判決だと思う。犯行当時、大月孝行は18歳だった。幼い頃から父親は母親と孝行に暴力をふる…

冨原眞弓様に

次の手紙は岩波書店の文庫係気付で冨原眞弓氏に送った手紙だ。しかし、二ヶ月近く経つのにナシのつぶてだ。手紙が冨原氏に渡っていないのか。それとも冨原氏が目下調査中なのか。いずれにせよ、このままだと私自身送ったことを忘れそうなので、忘れないうち…

オリンパスと読売

最近マスメディアで伝えられているオリンパスと読売の出来事は、「天皇制」が日本ではいまも健在であることを明らかにしただけだ。要するに、日本とはいまも菊川剛(オリンパス)や渡辺恒雄(読売新聞)など、無数の小天皇たちをいただく社会なのだ。という…

話しても分からない

自尊心の病に憑かれた人には話しても無駄だ。そんな人は相手の言うことを分かろうとはしない。話せば話すほどその人を激昂させるだけだ。だから、私はそんな人には何も話さない。沈黙するか、さっさとその場を立ち去るだけだ。私のことを無愛想だという人が…

西部邁と大審問官伝説

前回西部邁がドストエフスキーと同じ立場に立つ思想家だと述べたが、その言葉の意味を理解することができない人がいるかもしれないので、もう少し説明を加える。 と言っても、この説明はじつに簡単だ。西部の著書のどこを開いてもドストエフスキーの思想に出…

西部邁とドストエフスキー

私が西部邁を尊敬するようになったのには二つ理由がある。 ひとつは西部が『大衆の病理』(NHKブックス、1987)や『白昼への意思――現代民主政治論』(中央公論社、1990)などで述べている大衆批判やメディア批判に深く共感したからだ。ここで批判している…

西部邁を尊敬しているのなら

西田昌司は西部邁を尊敬しているそうだ。西田ほどではないかもしれないが、また右翼ではないが、私も西部邁を尊敬している。これまで西部の書いたものはほとんど読んできた。西部が西田も同席していた場で述べているように(「2009年大晦日特番 『如何にせん…

西田昌司に敢闘賞?

今朝の朝日の朝刊で星浩が「国会「三賞」」のひとつとして、自民党の西田昌司に敢闘賞を贈呈している。贈呈したのは、西田が前原外相の外国人献金問題を暴露し辞任に追い込んだからだ。最初冗談だと思ったが、何度読んでも冗談ではなく、星は本気で贈呈して…

民主党が終わった

野田佳彦が総理大臣になり、小沢一郎の盟友、輿石東を幹事長に選んだ。これで民主党が終わった。最近藤井裕久がNHKで小沢を激しく批判したので多くの人が気づいているだろうが、小沢は自分の権力欲のためなら何をしてもかまわないという人物だ。その一例…

昭和天皇が亡くなる直前のマスコミと菅包囲網

このブログはある理由のため、しばらく休むつもりでいたのだが、朝日新聞の秋山惣一郎記者の菅批判があまりにも狂った代物だったので、黙っていることが不可能になり、思わずその菅批判について書いてしまった。書いてしまうと、もはや菅擁護の気持は押さえ…

朝日新聞は小沢新聞

菅首相が辞任表明を行った直後、民主党幹事長の岡田克也は自分のブログで次のようにメディアを批判した。 先ほど、党の役員会、常任幹事会、そして両院議員総会で、菅総理が代表を辞任することを述べられました。そして、代表選挙の手続きに入ることが決定さ…

菅直人の人柄などどうでもいい

3月11日の震災のあと1ヶ月ほどして、松本健一内閣官房参与が記者の質問に答えて次のように言った。「菅首相が福島原発周辺は今後10年から20年、人の住めない土地になると言っていたよ」。これを聞いた記者が菅首相に確認したところ、自分はそんなこ…

鳩山由紀夫を批判するな

前回、鳩山由紀夫と小沢一郎の悪口を言ったが、小沢はともかく、鳩山由紀夫を私は嫌っているわけではない。いや、小沢にしても嫌いではない。なぜなら彼らは政権交代を成し遂げたからだし、そのために団結することができたからだ。その一点で私は彼らを高く…

狂ったメディアと政治

この国のメディアと政治はほんとうに狂ってしまったのか。 今朝の朝日新聞朝刊を読むと次のような記事があった。 「前原氏が総理になったら、すぐあの問題が再燃するぞ」。22日の国会内の公明党控室で向き合った自民党の逢沢一郎、公明党の漆原良夫両国対…

菅直人の政治スタイル

最近驚いたのは、テレビの国会中継を見ていて、自民党議員の「いつ辞めるのか」という追及に海江田経産大臣がわっと泣いてしまったことだ。つねづね「自分のことなどどうでもいいんです」と言っていた海江田氏が泣いたのだ。自分のことがどうでもいいのなら…

「君が代」と「川の流れのように」 

私は昔「川の流れのように」を初めて聞いたとき、なんていやな歌だと思った。もともと美空ひばりのあの悲鳴のような声がきらいだったこともあるが、何よりも秋元康の書いた歌詞が不快だった。特に最後の、 ああ 川の流れのように おだやかに この身を まかせ…

菅内閣包囲網

どうもまだ言い足りないので、前回の続き。 今年の3月11日、地震が起きたその時間、私は引っ越しを終えた直後で、段ボールの山を整理しながら、引っ越し前から見ていたテレビの国会中継を横目で見ていた。なぜ国会中継を見ていたのかといえば、菅首相が外…

ゼロ年代の50冊 

朝日新聞の「ゼロ年代の50冊」というシリーズで亀山訳『カラマーゾフの兄弟』を扱うというので、投稿した。 このシリーズでは、編集者が大岡越前みたいに最後にお裁きを下されるきまりになっているらしい。まず大岡様がご自分の考えに合う投稿を並べ、最後に…

緊急順不同

もうすぐ定年なので研究室にある本を整理しているということは前に書いたが、昨日も授業のあいまに整理していると、中野重治の本がかなり出てきた。さあ、これをどうするか、と、首をひねりながら、未練がましく撫でさすっていると、三十年前の記憶がよみが…

ないものねだり 

私は「徒党」を憎む。なぜなら、徒党を組むとは、丸山真男(『日本の思想』、岩波新書)のいう「タコツボ」に入り、山本七平のいう「集団倫理と状況倫理」(『「空気」の研究』、文春文庫、1983、pp.107-114)に与することであるからだ。そこには自由も責任…

「カティンの森」

ワイダの「カティンの森」を見た(シネ・リーブル梅田)。何度も見たいと思った。ワイダの最高傑作だろう。これは言葉の真の意味で「女性映画」だ。出てくるポーランド女性がすべて美しく清潔で強靱だ。女性だけが持つ強靱さが鮮明に描かれていると思った。…

軍隊に入ると・・・

裸の大将こと、山下清は「ぼくの絵は、兵隊さんの位でいうと、ど、どれくらいかな」という風に、絵でも何でも兵隊の位にたとえて言おうとしたらしいが、私もそう変わらない。と、言っても、絵ではなく、初めて会う人がいると、「この人は軍隊に入ると、どん…

「怪物」亀山郁夫

「怪物」亀山郁夫 いつからだろうか、背後に「神」を感じることができないような文章に耐えられなくなったのは。小説はもちろん、論文でもそうだ。雑文でも同じだ。私はそのような文章に耐えられない。たとえば、日本語で書く作家で私が繰り返し読むことがで…