2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

引き裂かれたもの

引き裂かれたもの(黒田三郎) その書きかけの手紙のひとことが 僕のこころを無残に引き裂く 一週間たったら誕生日を迎える たったひとりの幼いむすめに 胸を病む母の書いたひとことが 「ほしいものはきまりましたか なんでもいってくるといいのよ」と ひと…

どしゃ降りの一車線の人生

森有正はそのドストエフスキー論で、人生は邂逅(かいこう)、つまり、出会いだという。私もそう思う。邂逅によって、人生が決まる。とくに学校の先生との出会いは大事だと思う。私ひとりの狭い経験にすぎないが、これまで不登校や引きこもりになった子供や…

お笑いドストエフスキー講座

人間には二種類あって、ひとつは、人を笑わせるのが上手な人で、これは少ない。この種類の人間は稀少かつ貴重な存在と言ってもいいだろう。なぜ、稀少かつ貴重なのか。それは、人を笑わせるためには、さまざまな「共通感覚(常識)」を察知する鋭敏な神経を…

ローレン、ローレン

「新聞」で中学校の恩師、下村先生のことを書いたあと、少しずつ中学生の頃の記憶が戻ってきた。 私が通っていた中学校は「兵庫県加古郡学校組合立山手中学校」という長たらしい名前の中学校で、今は「加古川市立山手中学校」になっているらしい。 山手とい…

モッブ

昔、中野孝次と柄谷行人がある文芸雑誌で対談し、大喧嘩になったことがあった。と言うより、この二人は文字通り水と油なので、大喧嘩になるのが分かっているのに、編集者が面白がって対談をさせたという風に私には思われた。 私はこの二人が好きではなかった…

文脈が読めない人

「匿名について」で述べたように、私は亀山郁夫のドストエフスキー論を知るまで、インターネット上の掲示板には関心がなかった。インターネットというのは外国の新聞や雑誌を読むための道具だと思っていた。しかし、亀山のドストエフスキー論を賞賛している…

くたばれ、フロイト、ラカン!

昨夜、テレビをつけると、偶然、『沖縄 うりずんの雨』を撮ったジャン・ユンカーマン監督が沖縄のことを話していた(BS-TBS「週刊報道LIFE」:2015/5/10/pm.21:00-22:00)。要するに、現在、沖縄といわゆる「本土」の関係が悪化しているのは、「本土」の人間…

武田泰淳

武田泰淳は好きな作家で、若い頃は雑誌にその文章が掲載されると、それが短文であっても、わざわざその雑誌を買って読んでいた。こんなことをしていた作家は島尾敏雄や小川国夫など、数人しかいない。しかし、武田泰淳のどういうところが面白いのか、私には…

反精神分析

最近、朝日新聞に連載されていた「人生の贈りもの わたしの半生」シリーズで上野千鶴子氏が記者の質問に次のように答えていた。 ――家族や生い立ちについては一切答えない、としていた時期もあったそうですね。 子ども時代のことを聞くインタビュアーって、育…