2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

大岡昇平とドストエフスキー

新しい『ドストエーフスキイ広場 No.19』が送られてきたので、見ると、巻頭に福井勝也の「大岡昇平とドストエフスキー──『野火』を中心に」という論文が載っている。巻頭に掲げられるということは同人諸氏から高く評価された論文ということだろうか。しかし…

ドストエフスキー占い 

ドストエスキーやバッハは神が創造したものを「保存」しただけだ(ドストエフスキーの「創造」)というようなことを書くと、「萩原もとうとう神がかりになったか」と呆れる人が出てくるかもしれないので、ちょっとひとこと。 バッハが神の創造したものを「保…

ドストエフスキーの「創造」

ドストエフスキーの作品は、ドストエフスキーが書いたものではない。それはバッハの作品がバッハの書いたものではないのと同じだ。ドストエフスキーやバッハは神が創造したものを「保存」しただけだ。シモーヌ・ヴェイユは次のようにいう。 創造することの不…

金啓子様に

金啓子様に(4月22日付けのコメントに答えて): コメント欄では読みにくいかもしれませんので、ここで答えます。 失礼しました。四天王寺の婦人会館の道路を隔てたところにあるのはお寺でした。「あんさん、別れなはれ」とかで有名な尼さんがいた寺でし…

「お勉強」

またもや長い枕になる。本題は亀山郁夫批判と日本ロシア文学会への批判だ。 私は大学三年のとき、神戸の『たうろす』という同人誌に入った。入っていなければ、私は死んでいただろう。その理由について述べることはできないが、いずれにせよ、『たうろす』と…

緊急順不同

もうすぐ定年なので研究室にある本を整理しているということは前に書いたが、昨日も授業のあいまに整理していると、中野重治の本がかなり出てきた。さあ、これをどうするか、と、首をひねりながら、未練がましく撫でさすっていると、三十年前の記憶がよみが…

オブリビオン

外大のロシア語学科の学生で私と同じような経験をしている人は多いだろうが、学生の頃、私はソ連から出版された本(思想、経済、小説、詩のテキストや解説など)を読むのが苦痛だった。少し読むと、必ず、「マルクス曰く・・・」、「レーニン曰く・・・」と…

ないものねだり 

私は「徒党」を憎む。なぜなら、徒党を組むとは、丸山真男(『日本の思想』、岩波新書)のいう「タコツボ」に入り、山本七平のいう「集団倫理と状況倫理」(『「空気」の研究』、文春文庫、1983、pp.107-114)に与することであるからだ。そこには自由も責任…