朝日新聞は小沢新聞

 菅首相が辞任表明を行った直後、民主党幹事長の岡田克也自分のブログで次のようにメディアを批判した

 先ほど、党の役員会、常任幹事会、そして両院議員総会で、菅総理が代表を辞任することを述べられました。そして、代表選挙の手続きに入ることが決定されました。
 菅総理は挨拶の中で、「自分として、すでに(6月2日の)代議士会において、一定のメドがつけば若い世代にバトンタッチをすると言い、そしてその一定のメドとは、第2次補正予算、公債特例法案、再生可能エネルギー法案の3つが成立したときだと考えると言ってきた。」「第2次補正予算はすでに成立し、今日、公債特例法案と再生可能エネルギー法案の2法案について、参議院で可決・成立したので、そういう一定のメドがついたということで、代表から身を引くのだ」と言われました。
 この間、私も菅総理と毎週いろいろな話をしてきましたが、菅総理は、一貫して、3つの案件がきちんと片付けば自分は辞めると言っておられました。
 特に、公債特例法案については、次の代表・総理にゆだねるとなれば、また野党から、法案と成立させることと引き換えに、いろいろと注文いただくことになるので、自分としては、何としてもこれを成立させたいと言っておられました。
 そういう菅総理に対して「延命を図ろうとしている」と多くのメディアは書き立てましたし、「延命を図ろうとする菅総理に対し、(私をはじめとする)執行部が引きずり下ろそうとしている」と、書き立ててきました。
 それは全くの間違いであって、菅総理は延命を図ろうとはもちろんしていませんし、私とも対立はしていません。2人で、何とかこの3条件を早く満たすためにどうしたらいいかと、言わば二人三脚、あるいは、輿石参議院議員会長も含めた3人で進めてきました。
 この間、どうしてメディアがああいった物言いになったのか、大変不思議に思いますし、「正確に伝える」というメディアの使命を果たしていないのではないかと常に思っていたことを、この際、改めて申し上げておきたいと思います。
 いずれにしても、明日(27日・土)の午前中に候補者の締め切りが行われ、その後、いろいろな場で議論が行われます。テレビなどでの討論会もあるでしょうし、明日の午後には、日本記者クラブ主催の討論会、明後日(28日・日)には、インターネットを通じて党主催の討論会が行われます。
 そうしたものを通じて、候補者の政策、人柄などについて、多くの国民の皆さんに知ってもらえればと思います。
 幹事長としては、この代表選挙がしっかりと行われ、首班指名によって次の総理が誕生するまで、しっかりと見届けていかなければならないと思っているところです。
 ただ、基本的には、幹事長としての大きな重荷を降ろしたという感じになっています。 皆さん、本当にありがとうございました。

 私はこの岡田幹事長の言葉を読んでも、とくに驚かなかった。菅首相が「延命を図ろうとしている」というのは嘘であり、その延命を図ろうとしている菅首相を、岡田幹事長をはじめとする執行部が引きずり下ろそうとしているという報道も嘘だということは、はじめから分かっていた。菅直人が内閣で孤立しているという報道を読んでも、ああ、またメディアが菅直人を首相の座から引きずり下ろそうとしているな、と思っただけだ。いつからメディアのこのような「菅おろし」が始まったのだろう。私の記憶では昨年の6月3日、菅総理が誕生したその直後からだったと思う。
 菅総理が誕生したのは、鳩山由紀夫首相が母親からの巨額の政治資金を受け取った件で辞任に追い込まれ、そのとき政治資金規正法違反事件で疑惑をかけられていた小沢幹事長とともに辞任したからだ。そして党代表を選ぶ選挙が行われ、菅直人小沢一郎を相手とするその代表選挙の会見で、国民から疑惑の目を向けられている小沢一郎はしばらくおとなしくしていてほしい、というような意味のことを言った。そして選挙で小沢に勝ち、党代表になり総理大臣になった。この直後から小沢派の猛烈な菅おろしが始まったように記憶している。特に小沢の息のかかったメディアが菅直人の振る舞いを意地悪く批判し始めた。私はその批判の載った新聞や週刊誌、雑誌の切り抜きやコピーを集めていたのだが、今年の3月の引っ越しのさい、すべて廃棄してしまった。テレビでは鳥越俊太郎を始めとする人々が小沢擁護を繰り返し、その返す刀で菅批判を行っていた。それは見苦しいほどだった。インターネット上でもそのようなメディアに同調する人々が現れ、菅直人売国奴呼ばわりするようになった。まるでジラールのいう模倣の欲望による魔女狩り(もちろん菅直人が魔女だ)を目にするような気持がした。これについてはいつか詳しく述べるつもりだ。
 朝日新聞菅内閣の最後の最後までこの魔女狩りに手を貸した。たとえば、菅首相が辞任会見をした翌日、つまり昨日(2011/8/27)の朝刊3面で次のように述べている。

 「強い経済、強い財政、強い社会保障」を掲げた菅首相が就任直後に打ち出したのは、消費増税だった。昨年6月、首相は参院選マニフェスト発表会で唐突に「自民党が提案する10%をひとつの参考にした」と表明した。発言がぶれたことも世論の反発を招き、民主党は惨敗。ねじれ国会になり、出足からつまずいた。

 このような記述ひとつ取ってみても、朝日新聞菅首相に対して公平な態度をとっているとは言えない。たしかに消費税10%増税は説明不足ということは言えなくもないだろうが、唐突とは言えない。その当時消費増税は不可避であるという議論がテレビなどのメディアでも繰り返されていた。菅首相は野党、とくに自民党の同意を取り付けるために10%という数字を挙げただけだ。少なくとも私は菅首相の発言を唐突だとは思わなかった。しかし、結局、そのあとの参院選民主党は惨敗した。その直後からだ、菅首相が消費税増税を言ったから惨敗したのだ、という批判が小沢・鳩山一派から出てきたのは。
 民主党が先の参院選で惨敗したのは、菅首相が消費増税のことを口にしたからではない。なぜなら菅首相はわが国の財政は悪化していて、消費増税の議論を避けるわけにはゆかない、と述べただけであるからだ。国民は馬鹿ではない。小渕内閣の失政以来、国家財政が破綻寸前であることぐらい分かっている。消費税の議論を避けようとする者はいないはずだ。民主党が惨敗したのは菅首相が消費増税のことを口にしたからではない。
 民主党が惨敗したのは、小沢・鳩山一派の金権体質に国民が深く失望したからだ。それと鳩山首相の軽薄さにうんざりしたからだ。それだけだ。説明するまでもないことだろう。このことは小沢・鳩山一派にも自明の事柄であるはずだ。自明の事柄でありながら、彼らは参院選に惨敗したのは菅直人が消費増税を口にしたからだと言いつのった。馬鹿、と罵る気力も失せるほど愚かな振る舞いだ。そして、菅首相が退陣を表明した翌日、朝日新聞はまるで小沢・鳩山一派のように、消費増税のことを口にしたから民主党は惨敗したのだという嘘を反復した。その他、この日の朝日は紙面全部を使って菅内閣を全否定している。さぞ小沢一郎は喜ぶことだろう。これから朝日新聞と名乗らず、小沢新聞と名乗ればいい。