タコツボ

ジャニー喜多川と黒柳徹子

昨夜、テレビをつけたら、偶然、市川崑が監督した映画『犬神家の一族』をやっていた。面白いので、ずるずる最後まで見てしまった。わたしはホラー映画や怪談を扱った映画が大好きなのである。 その『犬神家の一族』をずるずる最後まで見てしまったのは、わた…

インテリ

「物語の暴力」について。 不良僧の穴山に、泰淳とおぼしきインテリの柳は、「お前さんなんか『赤』にでもならなきゃ、世の中のことはサッパリわからんのだから、なりたけりゃ、おなりなさい」と言われる(武田泰淳、『快楽』)。世の中を知りたいインテリが…

タコツボ

昔、木下豊房とともに亀山郁夫のスタヴローギン論や『カラマーゾフの兄弟』の翻訳についてロシア文学会あてに亀山との公開討論を申し込んだ。しばらくすると、討論会をしましょうという返事がロシア文学会から来たのだが、直前になって、木下豊房から討論会…

ドストエフスキーとニーチェ

三島由紀夫をはじめ、ニーチェの思想に共感する人は多いけれど、学生だった昔から、私にはそういう人がよく分からなかった。学生の頃は何となくイヤだなあ、と、思っていただけだが、ドストエフスキーが分かるようになってからは、ニーチェの思想は回心前の…

東京裁判

ベルジャーエフの西洋観 今もときどき読み返す文庫本のひとつに、学生のころ買った『現代世界における人間の運命』(ベルジャーエフ、野口啓祐訳、社会思想社、1957)というのがある。ヨーロッパに亡命していたロシア人のベルジャーエフが1934年に書いた…

親殺し・子殺し

以前、精神に障害を抱えた三男の暴力に悩んだあげく、その三男を殺してしまった父親の記事(2014年12月4日付朝日新聞朝刊)を読み、どうして父親はそんな風に思い詰めてしまったのか、と不審に思った。そのあと、朝日新聞(2014年12月30日朝刊)に以下のよう…

奨学金問題

大学で育英奨学金を受けて勉強した人は次の三種類に分かれます。 1)大学を出てすぐ企業などに就職し、奨学金を返済できる人。 2)大学院を出てすぐ教育機関(大学や研究所など)に就職したため、奨学金の返済を免除された人。 3) 大学院を出ても、すぐ教…

『翻訳の品格』

私は学生だった頃、もう題名さえ忘れたが、あるロシア史の翻訳を買った。しかし、そこに次々と意味不明の文章が羅列されているのに驚いたので、原文を取り寄せ、比較対照した。意味不明の箇所はすべて誤訳だった。初歩的な誤訳が大半だった。そこで、全部で…

オリンパスと読売

最近マスメディアで伝えられているオリンパスと読売の出来事は、「天皇制」が日本ではいまも健在であることを明らかにしただけだ。要するに、日本とはいまも菊川剛(オリンパス)や渡辺恒雄(読売新聞)など、無数の小天皇たちをいただく社会なのだ。という…

コップの中の嵐

長瀬隆からの返信を一ヶ月待っているが、来ないので、この文章を書く。ドストエフスキーに関心のない人にはつまらないコップの中の嵐だろう。しかし、ジラールのいう模倣の欲望を明らかにしている話だと思うので、ドストエフスキーやジラールに興味のある人…

ゼロ年代の50冊 

朝日新聞の「ゼロ年代の50冊」というシリーズで亀山訳『カラマーゾフの兄弟』を扱うというので、投稿した。 このシリーズでは、編集者が大岡越前みたいに最後にお裁きを下されるきまりになっているらしい。まず大岡様がご自分の考えに合う投稿を並べ、最後に…

緊急順不同

もうすぐ定年なので研究室にある本を整理しているということは前に書いたが、昨日も授業のあいまに整理していると、中野重治の本がかなり出てきた。さあ、これをどうするか、と、首をひねりながら、未練がましく撫でさすっていると、三十年前の記憶がよみが…

ないものねだり 

私は「徒党」を憎む。なぜなら、徒党を組むとは、丸山真男(『日本の思想』、岩波新書)のいう「タコツボ」に入り、山本七平のいう「集団倫理と状況倫理」(『「空気」の研究』、文春文庫、1983、pp.107-114)に与することであるからだ。そこには自由も責任…

軍隊に入ると・・・

裸の大将こと、山下清は「ぼくの絵は、兵隊さんの位でいうと、ど、どれくらいかな」という風に、絵でも何でも兵隊の位にたとえて言おうとしたらしいが、私もそう変わらない。と、言っても、絵ではなく、初めて会う人がいると、「この人は軍隊に入ると、どん…

名前について

亀山は序文でも「アレクセイ・カラマーゾフ」と訳していたが、本文でもそう訳している。 アレクセイ・カラマーゾフは、この郡の地主フョードル・カラマーゾフの三男として生まれた。父親のフョードルは、今からちょうど十三年前に悲劇的な謎の死をとげ、当時…