2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『ドストエフスキー 父殺しの文学』批判(2)

エディプス・コンプレックスなどない 亀山郁夫の文章の特徴は、つかみどころがないことだ。それは亀山が適当な思いつきに嘘をまぶしながら、連想ゲームのように次から次へと妄想を展開してゆくからだ。このため、読者が「変だな」と思っても、もう話題は別の…

『ドストエフスキー 父殺しの文学』批判(1) 

はじめに 亀山郁夫は『ドストエフスキー 父殺しの文学』(全二巻、日本放送出版協会、2004)の序文で次のようにいう。 本書は、ドストエフスキー文学における最大の謎とされる「父殺し」の主題を扱っている。しかし「父殺し」における「父」とは、作家の父ミ…

ゼロ年代の50冊 

朝日新聞の「ゼロ年代の50冊」というシリーズで亀山訳『カラマーゾフの兄弟』を扱うというので、投稿した。 このシリーズでは、編集者が大岡越前みたいに最後にお裁きを下されるきまりになっているらしい。まず大岡様がご自分の考えに合う投稿を並べ、最後に…

あなたはなぜ這っているのか、 こんな日に。 全身をまるでアコーディオンのように、 ふくらませながら。 なるほど雨は滝のように降りそそいでいる、 あなたのそのあわてふためいた背中に。 あなたは固いアスファルトにとまどっているのか。 わたしにはあなた…

亀山郁夫とイソップ言語

「亀山郁夫の傲慢」で明らかにしたように、亀山は私のいう「自尊心の病」に憑かれている。また、「続・自尊心の病」で述べたように、自らの自尊心の病に気づくことができない者は『地下室の手記』以降のドストエフスキーの作品を理解することができない。 な…

亀山郁夫の傲慢

亀山郁夫の『磔のロシア──スターリンと芸術家たち』(岩波書店、2002)も妄想のかたまりと言うべき本だが、それは同時に不愉快きわまりない本でもある。なぜ不愉快なのかといえば、それは亀山がこのスターリンによる陰惨な悲劇をスラップスティック(ドタバ…