好きな音楽

鈴木大介と武満徹

最近、本棚の整理をしていると、『武満徹全集』(小学館)がセロファン紙に包まれた新品の状態で出てきたのでひどく驚いた。 五年ほど亡き妻の看病に明け暮れているうちに買ったことさえ忘れていたということだろう。たしか、全三巻だったはずだが、なぜか第…

誰のための愛

この前テレビを見ていたら、倍賞千恵子とクミコという人が「誰のための愛」という歌を歌っていた。いい歌だった。思わず泣いてしまった。 その歌は三浦綾子の「氷点」という小説をもとにしたものらしい。歌詞に旭川と「氷点」という言葉が出てくる。「氷点」…

芸術の力

このたび来日した、ビーチ・ボーイズのメンバーだったブライアン・ウィルソンの言葉(『朝日新聞』、2016年3月23日夕刊より)。 「音楽を作るのは時に、とても孤独な作業。その孤独から僕自身を救い出してくれるのは、メロディーなのです、おそらく」 たしか…

無神論者、それも徹底的な

アナーキストの椎名其二については「ドストエフスキー研究者 松尾隆の評伝」でも少し触れたが、椎名は日本が先の戦争中、妻の母国であるフランスにいた。 椎名は石川三四郎や大杉栄の友人だった。椎名はフランスにとって敵国の外国人であったので、収容所に…

怒りの根

昨夜、私は歌手の高橋優くんと森山直太朗くんの三人で酒を飲んでいた。 「ほら、あのちょっと色の黒い、目の大きい女の子・・・そうそう、ぼくはあの夏菜さんという女の子が好きなので、NHKの「カバーズ」という番組をいつも見ているんだけど・・・きみがそ…

どしゃ降りの一車線の人生

森有正はそのドストエフスキー論で、人生は邂逅(かいこう)、つまり、出会いだという。私もそう思う。邂逅によって、人生が決まる。とくに学校の先生との出会いは大事だと思う。私ひとりの狭い経験にすぎないが、これまで不登校や引きこもりになった子供や…

倍賞千恵子

なぜか私は倍賞千恵子という存在が好きで、若い頃から、彼女の出る映画はできるだけ見るようにしてきた。 きょう、テレビをつけると、偶然、すでにしわくちゃになった倍賞氏が岩崎宏美と並んで森繁久弥の「オホーツクの舟歌」を歌っていた。その姿を見て、思…

オクジャワのソ連批判

「初めての恋は」(ブラート・オクジャワ) 初めての恋は、心を燃やす。 二度目の恋は、初めての恋を追う。 三度目の恋は、手が震える。 鍵が錠に合わない、腕にかかえたトランク。 最初の戦争は、誰の罪でもない。 二度目の戦争は、誰かの罪。 三度目の戦争…

種をまく

ようやく大根と蕪(かぶ)の種(たね)をまくことができた。大根と蕪は種をまくまえに堆肥と苦土石灰、それに油粕を入れた畝を一週間寝かせる。その一週間寝かせて、さあ種をまこうと思ったとき豪雨があった。種まきは延期。畝を作り直し、ようやく今朝まく…

武満徹

私は武満徹の音楽を心から愛するが、それは武満が真実を愛する人間であるからだ。真実を愛する人間の振る舞いは、それが錯誤に満ちたものであるときも美しい。彼らの嫉妬は美しいし、その怒りも美しい。そして、真実を愛する人間が芸術家であるとすれば、そ…

ピアソラ

月刊誌とか週刊誌を買うのは年に一、二度だ。買っても読まないのが分かっているので買わないのだが、それでも、どうしても読みたい記事があるときは買う。そんなことは年に一、二度ぐらいしかない。年に一、二度買う月刊誌や週刊誌も、目当ての記事を読むと…

國松竜次ギターリサイタル 

カミさんと「國松竜次ギターリサイタル2010──ORIGINAL & ARRANGEMENT」(午後2時ー4時半:学園前「アートサロン空」)。 【演奏曲目】 1)パガニーニの主題による狂詩曲(ラフマニノフ、國松竜次編曲) 2)3つのスペイン民謡(ファリャ、國松竜次編…

オブリビオン

外大のロシア語学科の学生で私と同じような経験をしている人は多いだろうが、学生の頃、私はソ連から出版された本(思想、経済、小説、詩のテキストや解説など)を読むのが苦痛だった。少し読むと、必ず、「マルクス曰く・・・」、「レーニン曰く・・・」と…

菅原洋一リサイタル

カミさんの好きな菅原洋一のリサイタル(堺市民会館)。大ホールが「前期高齢者」と「後期高齢者」で満席。菅原洋一自身は「後期高齢者」とのこと。しかし、声はまったく衰えておらず、逆に昔より声に深みが増したほどで、休憩をはさんで二時間を歌いきった…

江川卓の妄説

午前中は家事と勉強。午後、「ギタリストたちの饗宴」(荘村清志・鈴木大介・大萩康司:秋篠音楽堂)に行く。前売券が手に入らなかったので、当日券売り出しの一時間前に行って並ぶ。すでに女性が一名並んでいた。その時間を利用して、昔読んだ中村雄二郎の…

ヴァイオリニストは女にかぎる

ジャニーヌ・ヤンセンのヴァイオリンを聴いて、小林秀雄の「ヴァイオリニストは女にかぎる」という言葉を思い出した。なぜ小林がそう言うのか理由がよく分からないけど、小林は正しいと思う。男はヤンセンみたいに弾けない。狂ったように髪を振り乱し、よだ…

美は世界を救う

アンジェラ・ヒューイットの平均律(旧い録音)が届いたので聴く。骨細の人が出す音だけれど、すごい集中力。私が待ち望んでいた普通の演奏だった。バッハは奇をてらわず、普通に弾くのがいちばん難しい。 集中力といえば、きのうNHK教育テレビで見たジャニ…

アンジェラ・ヒューイット

終日、勉強。あいまに本の整理、フレスコバルディ、散歩。小林秀雄のおかげで少し発見があった。 朝日新聞で大江健三郎がアンジェラ・ヒューイットによる平均律クラヴィーア曲集の演奏をほめていたので、注文。ついでに彼女の演奏によるゴールドベルク変奏曲…