武田泰淳

 武田泰淳は好きな作家で、若い頃は雑誌にその文章が掲載されると、それが短文であっても、わざわざその雑誌を買って読んでいた。こんなことをしていた作家は島尾敏雄や小川国夫など、数人しかいない。しかし、武田泰淳のどういうところが面白いのか、私には今もそれが分からない。分からないが、思いつきで言うとすれば、それは武田の計算のないというか、無計画でだらしのない文章に惹かれたのかもしれない。
 武田は戦後すぐに北海道大学で教えたらどうかと言われ、食べるのに困っていたので、ほいほい誘いに乗る。しかし、十回ほど話すと話すことがなくなり、東京に逃げ帰る。私は武田のこういう無計画なところが好きなんだろうと思う。私のこのブログも書くことがなくなり、同じことばかり書いているような気になってきた。武田なら、もうやめた、と言って書くのをやめるだろう。しかし、私は武田以上に無計画らしく、やめるという計画さえ立てることができない。なさけない。