偶然の家族

松本人志

松本人志氏がスキャンダルを起こして週刊誌で叩かれている。わたしはそのこと自体にはあまり興味を覚えない。漫才師にモラルを求めるのは、魚屋に肉を売れと言うようなものだ。しかし、あることについて不愉快になった。 それは、youtubeである人が松本人志…

叫びとささやき

ツタヤでベルイマンの『叫びとささやき』を借りてきて、初めて見た。わたしが学生の頃、評判になった映画だった。学生の頃に見ても、何も分からなかっただろうと思う。自尊心の病に憑かれた人間に、この映画は分からない。彼らに愛は分からない。彼らは自分…

不幸な家族は幸福な家族を不幸にする

元農水次官が長男を殺してしまった事件の判決が先日あった。 私はこの事件が起きたとき、これは典型的な「いじめ事件」だと思った。 私のいう「いじめ事件」とは、家族の一員が誰かから受けたいじめによって家族が崩壊してゆく事件のことだ。私の家族の場合…

良心的兵役拒否

良心的兵役拒否というのが私は嫌いです。良心的でなければ、兵役を拒否してはいけないのかと思う。それはまさに辺見さんがおっしゃるように、兵役という制度自体を認める行為でしょう。非良心的兵役拒否でいいじゃないですか。そう書いたら、鶴見俊輔が賛意…

女性装

むかし、わたしの友人に二人、女性装が趣味だという男がいた。と、言っても、ふだんから女性の姿をしているわけではなく、深夜こっそり、あるいは家に誰もいないとき、女性の服装をして楽しむのだそうである。 その告白は、酒席で、あるとき不意に、わたしに…

夏苅郁子 

このインタビュー記事は良かった。しばしば、朝日新聞は下らない、廃刊した方がいい、と思うことがあるのですが、こういう記事が載ると、やはり朝日はいいと思う。私がこの医者を愛するのは、えらそうに説教しないし卑怯ではないから。ありのままの自分を他…

団塊の世代と戦争後遺症

私はこれまで何回か、面と向かって、 「どうして団塊の世代の人にはバカが多いんでしょうね?」 という意味の言葉を投げかけられたことがある。そう言うのは、きまって、私より一回りぐらい若い世代の男性だ。きっと団塊の世代にひどい目にあったのだろう。…

続・「謎とき」シリーズがダメな理由(6)

(承前) これから亀山郁夫の『謎とき『悪霊』』を批判してゆくのだが、本当のことを言うと、こういうことはやりたくない。なぜか。それは、たとえば江川のラスコーリニコフ=666説にせよ、亀山のマトリョーシャ=マゾヒスト説にせよ、それを批判するのは…

「悪霊」は死産児に入る(承前) 

前回、ドストエフスキーのいう「偶然の家族」について少し述べた。この偶然の家族は、日本の死産児について論じるために無視することのできない現象なので、再び取り上げておこう。 ドストエフスキーはその後半生のほとんどを費やして、この偶然の家族に深く…

日本における死産児(承前) 

これまでの説明で死産児とは何かについておおよその理解は得られたことと思う。しかし、その不十分な説明だけでは、これから議論を進めてゆくとき、読者にさまざまな疑問が生じてくるだろう。そこで、日本における死産児について、あと少し説明しておこう。 …

「引きこもり」私感

きなりさんという方からコメントを頂いたけれど、きなりさんによって指摘された問題が私の力を超えていて、正確に応答することができなかった。自分以外の誰かを助けることができればいいのだが、それは私たちには不可能だ。これは人間にとって、自分のエゴ…