こころなきみにも

当ブログの題名の由来

「心なき身にもあはれは知られけり鴫(しぎ)たつ沢の秋の夕暮れ」 (私訳:もはやこの世には何の用もないと思い定めた私なのに、秋の夕暮れ、鴫が水辺から飛びたつのを見ていると、今更ながらこの世のはかなさが身に沁みる)。

初心忘るべからず

「初心忘るべからず」という言葉があるが、私にとって「初心」とは、離人症(私の場合は離人神経症)から回復したときの感覚だ。離人症に30歳すぎになった。自尊心の病の果てになった病だった。その数年後に見た離人症から回復したときの風景については何…

鈴木大介と武満徹

最近、本棚の整理をしていると、『武満徹全集』(小学館)がセロファン紙に包まれた新品の状態で出てきたのでひどく驚いた。 五年ほど亡き妻の看病に明け暮れているうちに買ったことさえ忘れていたということだろう。たしか、全三巻だったはずだが、なぜか第…

永遠の中のゼロ

宇宙の永遠の時間の中で、地球が存在する時間は一瞬というより、かぎりなくゼロに近い。そのかぎりなくゼロに近い地球の時間の中に生を受けた私たちの人生はさらにゼロに近い。人は生まれた瞬間に死ぬのだ。これが私が六歳の頃に知った真実なのである。生ま…

才能

楽譜は手段にすぎないということ。大事なのは、その楽譜によって作られている世界です。世界が先にあって、それを楽譜が写す。そして演奏者が、その世界を再現する。楽譜だけを忠実に再現する演奏はつまらない。また、もとになる世界のない、楽譜だけで作ら…

美しい透明な存在

今年の夏は体調不良に悩まされた。何をするにもおっくうで、暑いというので畑仕事もいいかげんにすませ、年とともに下手になるギターにさわる気にもなれず、ますます下手になった。そして身体のあちこちが痛くなり、医者に行って、「お腹などが痛いんですが…

悲しい記憶

トルストイの『アンナ・カレーニナ」』の冒頭に、「幸せな家庭はすべて、おたがいに似ている。でも、不幸な家庭はそのひとつひとつが、それぞれに不幸だ。(Все счастливые семьи похожи друг на друга, каждая несчастливая семья несчастлива по-своему.)…

ピアソラ

月刊誌とか週刊誌を買うのは年に一、二度だ。買っても読まないのが分かっているので買わないのだが、それでも、どうしても読みたい記事があるときは買う。そんなことは年に一、二度ぐらいしかない。年に一、二度買う月刊誌や週刊誌も、目当ての記事を読むと…