渡辺謙の演技論

 さっきテレビを点けると、NHKテレビで俳優の渡辺謙大河ドラマの「独眼竜政宗」を演じたときの経験を語っていた。要するに、そのドラマを演じているとき彼に分かったのは、伊達政宗という歴史的な人物の一生を見渡しながら、ここはこう演技すべきであると計算しながら演じてはいけない、常に今に生きているように、先の見えない今を生きているように演技すべきであるということだった・・・という話だった。これはわたしが「ドストエフスキーの壺の壺――シニフィエはどこにもない」で書いた、ドストエフスキーポリフォニー小説を読むときに気をつけなければいけないことと同じだと思い、少し驚いたのだが、結局、人生あるいは持続とはそういうものなのである。