PAについて

 英語に'Patient-centred Health Care(PCHC)(患者中心の医療)'という言葉があります。ここから連想して、私は'Ego-centred Argument(自尊心中心的な議論、略して'EA')'、'Problem-centred Argument(課題中心的な議論、略して'PA')'という言葉を作りました。これはこのブログの「話しても分からない(http://d.hatena.ne.jp/yumetiyo/20110930/1317378821)」 で書いたことを単純な形で表現する必要に迫られたからです。
 その「話しても分からない」という記事で書きましたが、自尊心の病に憑かれた人は、自分の自尊心を脇に置いて議論をしようとはしません。議論においていつも相手との勝ち負けにこだわります。相手の一枚上を行こうとするのです。これは国会での議論などを聞いていると、いつも感じることです。少なくとも私の知る範囲で、相手の意見の方が正しいと判明しても、「参りました。あなたが正しい」と言った国会議員を見たことがありません。学者でもこれは同じです。明らかに自分の仮説が現実に合わないのに間違いを認めようとしない人文系の学者は多数います。
 しかし、こういうEA(自尊心中心的な議論)を繰り返していますと、「声の大きい人(政治的に力をもつグループのボスなど)」の間違った考えが社会に浸透することになりかねません。また、このために、そのEAに反対するためだけに反対するという、これもまた困ったEAが社会の別の階層に浸透し、EA同士が不毛な対立を繰り返すことになります。
 このような対立の先にあるのは、私たちの生きている社会の崩壊です。これは先の大戦での陸軍と海軍などの対立によって明らかになった現象です。陸軍のEAと海軍のEAが対立し、日本は崩壊の危機に立たされたのです。今回の福島の原発事故などでも同じことが反復されています。
 このような事態を回避するためには、PA(課題中心的な議論)に慣れてゆかなければなりません。すでに大人になった人たちにそれに慣れなさいと言っても無理かもしれないので、家庭や学校などで、子供たちや学生にPAを教えてゆくのがもっとも有効ではないかと思います。そのためには親や教師がPAを身につけなければなりません。そのためにはどうすればいいのか。私としてはドストエフスキーの小説を読んで下さいというしかないのですが。