人生は空漠たるものか

一昨日は後期最初の『カラマーゾフの兄弟』の講義。インフルエンザ騒ぎで前期最終講義が休講になったため、後期は「大審問官」の途中から始める。講義の最初に、マザー・テレサの生涯を紹介した「あの人に会いたい」というNHKテレビの放送録画を見てもらう。マザー・テレサの言葉、「私は自由です」、「自分が痛むまで人を愛するのです」、「たとえ母親があなたを見捨てても、けっして見捨てない方がおられます」。公開講座なので学生以外に社会人の受講生が三十人おられる。テーマは「人生は空漠たるものか」というもの。昔、森敦がふと深夜に目を覚まし「人生とは空漠たるものである」と思い、明け方寝入ったというようなことを朝日新聞のコラムに書いていた(切り抜きがある)。その森敦を嫌っていた小島輝正も死ぬ前、人生は空漠たるものであると同じ朝日のコラムに書いていた(と記憶する)。私も深夜目を覚ますと、同じようなことを思う。人生が空漠たるものであることは明らかだが、自分に与えられた自由をいかに使うかが問題なのだ。