魯迅

辺見庸:先ほどの中国の話にしても、戦争になれば負けるから話の糸口を見つけろと言っているわけではないのです。ぼくは徹底的な反戦主義者ですが、その立場から言っているのでもない。人間として根本のところでまず相手に、人間というものに興味を持てないのかということです。資本や権力ではなく、生身の人間にもっと関心を持てないのか。(中略)
 とるに足りないものに還る。これこそが魯迅の視点です。(『絶望という抵抗』、辺見庸佐高信、株式会社金曜日、2014、pp.138-139)

 だから、魯迅ドストエフスキーを愛読したのだ。人間というものに興味が持てない人、そのような人はもはや人間ではない。ドストエフスキーはそのような存在を「死産児」と呼んだ。私たちのまわりにはそんなスターリンヒトラーの兄弟姉妹があふれている。