間抜け

いつからかは忘れたが、あるときから、作家とか思想家というのは、間抜けなことばかり言い散らかして死んでゆく人のことだと思うようになった。そうでない人も少しは間抜けなことを言って死んでゆくのだが、作家や思想家のように活字にして、人にその間抜けぶりを知らせないだけマシなのだ。それなのに、わたしのように、作家や思想家になりたがる人がいる。そういう人は顔を見たらすぐ分かる。大福餅のような顔をしている。そういう人には近づかないのがいちばんいい。しかし、相手がこちらに近づいてくるのは避けがたい。
「やあ、おはよう」
「おはよう」
「元気?」
「まあね、じゃ、さよなら」
という風にやり過ごすしかない。
わたしもそうだが、そういう人は自分が間抜けだと思っていない。どこからそんな自信が湧いてくるのか。長年、同類の間抜けな作家や思想家を読んできたからか。根っこから腐っている。しかし、間抜けとは何ぞや。それが問題なのである。