武田泰淳と古井由吉

武田が古井に「(演歌を)自分で歌いますか」と訊くと、古井が「歌います」と答える。すると、武田が「うん、それは話しやすい」という(『生きることの地獄と極楽――武田泰淳対話集)』(勁草書房、1977、p.96)。ドストエフスキーだって、日本人だったら演歌を歌っただろう。ツルゲーネフとかトルストイは歌いそうにない。なぜなら、根がないから。つまり、大衆という存在を理解できないから。日本のいわゆるインテリが演歌を毛嫌いするのも、このためだ。