ピナ・バウシュ

きょう、BSから録画していた「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」というドキュメント映画を見た。大げさではなく、これほど深く感動した映画はない。ほとんど最初から最後まで泣き続けた。これに類似した感動を味わったことがあるだろうか。そう思って記憶をたどってみても思いつかない。それほど独特な感触のダンスだ。とくにその悲しみの表現が限りなく美しい。
 私は舞踏が好きだ。音楽と舞踏が結びつくとき、これ以上のものはないとさえ思う。
 30年ほど前、神戸の大倉山近辺のなめくじアパートに住んでいたとき、大倉山ホールにベジャールが来たことがある。しかし、金がなかったので、残念な気持をかかえてホールの外の庭でたたずんでいると、なぜか不意に、舞踏団の一団がベジャールとともに庭に出て来た。私は彼らに取り囲まれるかたちになった。急いで脱出したが、男女とも顔が小さく小柄で、天使のように思われた。
 ベジャール以外にも、木佐貫邦子も見たいと熱望していたが、これも金がないのであきらめていた。ピナ・バウシュのことはまったく知らなかった。彼女も日本で踊ったらしい。知らなくてよかった。もし彼女の真価を知っていたら、ベジャール木佐貫を見ることができなかったときと同じように、ひどくつらい思いをしただろう。しかし、一年の終わりにすばらしい映画を見ることができた。この映画を見て、小説はどう書けばいいのかが分かったように思う。