アンジェラ・ヒューイットの平均律（旧い録音）が届いたので聴く。骨細の人が出す音だけれど、すごい集中力。私が待ち望んでいた普通の演奏だった。バッハは奇をてらわず、普通に弾くのがいちばん難しい。
集中力といえば、きのうNHK教育テレビで見たジャニーヌ・ヤンセンはすごかった。あのチャイコフスキーのヴァイオリン・コンチェルトをものすごい速度で弾いたんだけど、並のヴァイオリン弾きなら普通の速度で弾いても一瞬「う」とつまるところまで、楽々と弾いてしまった。音も骨太の人のものだけれど粗暴ではなく、深々として美しく、音程も完璧だった。最初はドレスからのぞく彼女の豊かな胸のあたりに私の悪魔心がさまよっていたのだけれど、しばらくすると演奏にひきこまれ、そんな心は消えてしまった。美は世界を救う。
