敗戦しました

 きのう、安倍首相が戦後七十年の首相談話を発表しました。その内容についてはいろんな人がいろんなことを言っていて、なるほど、と思うだけですが、どうして誰もその文章のことを言わないのだろうと不思議に思いました。
 安倍さんの談話は他人事(ひとごと)みたいな文章で、日本という国の運命をぽかんと口をあけて見ているような感じです。
 とくにその他人事という感じが象徴的に現れているのは、「敗戦しました」という言葉です。私が変なのかもしれませんが、こういう日本語を聞くのは初めてです。こういう場合、「その戦争に負けました」と言わなければなりません。「敗戦しました」と言うと、聞いたことのない言葉づかいなので、ぎょっとしたあと、「日本って国が負けたと言いたいのかな」と思ってしまいます。いずれにせよ、他人事という感じが強くなります。
 ちなみに、私は「悩ましい」という言葉を「判断に困る」という意味で使う人に会うと、困ってしまいます。とくに、その人が立派な人の場合、困ります。なぜなら、「悩ましい」というのは、現代ではエッチ方面の事柄に使用される言葉であるからです。これは「おいしい」という言葉を「得だ」という意味で使う人の場合も同じです。そんな意味で使う人に会うとがっかりします。だって、「おいしい」というのは食べ物が「おいしい」場合だけで、ものごとの損得に使うと、ほんとうに下品な感じになるからです。こういう人とは友達になれないな、と、がっかりします。
 私は「敗戦しました」と言った安倍さんにもがっかりしました。美しい日本を守ろうとしている安倍さんなら、日本語も正しく使ってほしいと思います。いや、やはり私の言語感覚が変なのでしょうか。もし、私が間違っているのなら、謝罪します。

・・・満州事変、そして国際連盟からの脱退。日本は、次第に、国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」への「挑戦者」となっていった。進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました。

 そして七十年前。日本は、敗戦しました。・・・