冷凍保存

 ずいぶん久しぶりのブログだ。これから思い出したら書くことにしよう。
 昨年の九月、舌癌の手術をした。幸い、初期のもので、すぐ退院できた。しかし、ロシア語が喋りにくくなった。巻き舌のRの音が出ない。日本人の半分ぐらいは巻き舌のRの音が出ないそうだから、まあ、いいか。
 私が手術をしたあと、十二月に、五十年近く寝食を共にしてきた妻が亡くなった。三年余り前から難病のため、入退院を繰り返していたが、とうとう亡くなった。事情があって、私ひとりで看病をしていた。
 自分を看病しながら妻を看病するのは忙しかった。悲しむヒマもなかった。
 先日、テレビを見ていると、伊丹十三の奥さんの宮本信子が夫の死を冷凍保存していると言っていた。誰しも同じことを考えるものだと思った。
 私は死ぬ直前になったら、妻の死を解凍しよう。しかし、解凍するヒマがあるだろうか。