アルマーニの制服

 これは人のワルクチである。気分が悪いが、言わなければなるまい。
 銀座の泰明小学校の校長が生徒にアルマーニの制服を四月から着せるそうだ。「ヴィジュアル・アイデンティティ」とかいうわけのわからんものを生徒に身につけさせたいということだ。要するに、わたしたちはお前たち貧乏人とは違うのである。したがって、服装も高級なものを身につけるのである。そういう意識を生徒に持たせたいとわしは願う、と、いうことだろう。まさに自尊心(虚栄心)の病であり、生徒に他人より一枚上を行かせようという模倣の欲望を掻き立てる所業である。教育者としては失格だ。辞職に値する振る舞いだろう。この校長は亀山郁夫の狂ったドストエフスキー論でも読んだのか。それとも講演を聴いたのか。
 私の記憶によれば、亀山はエッセイで自分がアルマーニを着ているのを自慢していた(『カラマーゾフの兄弟』の翻訳が売れたからね)。だから、自分の翻訳は「アルマーニを羽織ったドストエフスキー」だと言ったのだろう。アルマーニが買えるほどもうかった『カラマーゾフの兄弟』の翻訳という意味だろう。私のドストエフスキーの翻訳はそんじょそこらの貧乏人の訳したドストエフスキーとは違うのね、と言いたいのだろう。ここまで狂うことができるものか。
http://www.ne.jp/asahi/dost/jds/dost128.htm